ヴォイジー・ハウス:歴史と未来を繋ぐ建築の象徴
今回ご紹介するのは、イギリス・チズィックにある【Voysey House】(ヴォイジー・ハウス)と呼ばれる、「Morris & Co.」を擁するSanderson Design Groupの本社屋です。ヴォイジー・ハウス ©JACK HOBHOUSE
The History of Voysey House
ヴォイジー・ハウスは、アーツ・アンド・クラフツ運動をけん引した建築家でありデザイナーのひとりであるC.F.A.ヴォイジーによって設計された建物です。モリス商会でも活躍したヴォイジーは、そのデザイン哲学をこの建物にも色濃く反映させました。
1902年に完成したこの建物は、同じくSanderson Design Groupの傘下にあるブランド「Sanderson」の前進であるアーサー・サンダーソン&サンズ社の壁紙工場として利用され、現在はSanderson Design Groupの本社として使用されています。
この歴史的建物は、イギリスの文化的・歴史的価値を評価され、「Grade II*(グレード II*)」に認定されており、重要文化財として保護されています。
1928年まで壁紙工場として使用されていた歴史ある建物ですが、隣接するサンダーソンの工場で発生した火事をきっかけに閉鎖、そしてこの地を離れることになりました。
その後はさまざまな企業がオフィスとして建物を活用していましたが、現CEOリサ・モンタギュー氏の取り組みによって、ブランドの歴史と未来をつなぐ象徴的なプロジェクトとして、2024年夏、チズィックへ回帰しました。建設当時の建物
Features of Voysey House
ヴォイジー・ハウスは、1902年に完成した当初から、いくつかの特徴的なデザイン要素がありました。
まずは白い釉薬レンガを使用した外壁。この外観から設立当時は通称「White Building」(白い建物)と呼ばれていたそうです。
そしてモダンデザインの先駆けである、シンメトリカルなデザインとフォルム、そして最上階の舷窓。これはポートホール・ウィンドウと呼ばれるもので、壁紙工場の通気と採光を目的としたものでした。
最後にヴォイジー・グリーンと呼ばれる独特の窓枠カラーが、建物のデザインに華を添えていました。
このようなオリジナルデザインは、現代の建築基準に適合させるために改修され、より環境性の高い建物へと生まれ変わり、歴史的な面影を残しつつ、現代的な機能を取り入れた姿へと蘇りました。最上階から見える特徴的なフォルム ©JACK HOBHOUSE
Showroom
現在、1階にはSanderson Design Groupのショールームがあり、多くのサンプルや貴重なアーカイブ資料が展示されています。さらに、木版印刷のデモンストレーションなども行われ、ブランドの歴史や歩みに触れることができる空間として使用されています。
ショールームは一般の方もご覧いただけますので、渡英の際はぜひご来場を。
100年を超える歴史と伝統が息づく建造物とブランドの魅力を体感いただけます。展示されてるファブリックサンプルたち
アーカイブ資料
C.F.A.ヴォイジー(1857-1941):イギリスの建築家、デザイナー、アーティストであり、アーツ・アンド・クラフツ運動の重要な人物のひとり。彼の作品には、自然や手工芸への深い敬意が表れており、ウィリアム・モリスに比べて20歳ほど若かったこともあり、両者の活躍時期は重ならないものの、モリスの思想に強く共感し、モリス商会の一員として自然をモチーフにしたシンプルで洗練されたデザインを手掛けました。
Sanderson Design Group
Voysey House, Sandersons Ln, Chiswick, London W4 4DS