#花とモリス No.03 café Lotta 特別篇(前編)
毎月、その月をイメージしたモリスアイテムを使ったインテリアシーンをお届けする「#花とモリス」。
No.3と次回No.4は実際の撮影をさせていただいた「café Lotta(カフェロッタ、以下ロッタ)のオーナー、桜井かおりさんへのインタビューを特別にお届けします。
2021年9月末、お店のあった建物の建て壊しにより惜しまれつつ20年間の営業に幕を閉じたロッタ。10席しかない、7坪のその小さなカフェには全国からファンが訪れ、平日でも終日満席、待ち時間が長く続く人気店でした。そのロッタの壁に貼られていたのがウィリアム・モリスのデザインによる"Pimpernel"の壁紙です。桜井さんにPimpernelに関するエピソードや想いをたずねました。
ロッタと言えば、というアイコン的存在だったのが店内の壁面のPimpernel。ただ、実は桜井さんは当初これがモリスのデザインであったことを知らなかったそう。
「パリの友達にいいところがあるよ、と聞いて行ったカフェに貼ってあったのがこの壁紙。誰のデザインかも分からず、有名なものとも知らずに、壁紙が素敵なお店と思ってパリに行く度に訪れていたんです」
ロッタのオープン以後、白、グレー、ピンクと色を変えていた壁面をPimpernelの壁紙に変えたのは、営業時間とメニューを絞った喫茶店として“ひとり営業”に切り替えるタイミングだったそう。
「今までのロッタは若いスタッフも働くすごくかわいいカフェのイメージ。でも私ひとりが働く喫茶店にしてはアンバランスじゃない?と友人に言われて。どうやったらシックに、大人っぽくできるんだろうって思って。そんなときにあのパリのカフェのことを思い出しました。」
内装をやっている友人からこの壁紙がウィリアム・モリスデザインのものだと知り、同じ壁紙を貼ることを決めた桜井さん。「柄のある壁紙を貼ることは勇気のいること」「大柄だからすぐに飽きてしまうかも」と思いつつも、実際は全くそんな心配はいらなかったそう。
「毎日壁紙を見てすばらしいな、と眺めながら気持ちよく過ごせていました。日の光が入る朝もいいけれど、閉店後の夕方6時過ぎも良くて。とにかく色が素敵。」
そしてこの壁紙がロッタのアイコンとなり、全国のファンに浸透。さらにロッタに来店するお客様との会話にも繋がったと言います。
「同じ柄の壁紙を家に貼りました。とか、カーテンをこれにしました。とか。この柄を見たらロッタのことを想ってくれる。その場所にいる人、雰囲気を伝えてくれるものになる。壁紙の力ってすごいな、と思います。だから無地の壁じゃなくて壁に柄物を使うって大事だな、って」
Pimpernelの壁紙はベニヤ板に貼られていたこともあり、取り壊し前に外されて額装。閉店後は講演で全国をまわりたい、と言う桜井さんに“同行”して全国行脚するそう。
「看板代わりに持って行ったら、やっぱりこの壁紙がロッタの象徴でもあるからみんな喜んでくれると思うの。」
「#花とモリス No.4 café Lotta 特別編(後編)」へ続く
桜井かおり
文筆家。大手損害保険会社のOLを経て、東京・代官山「クリスマスカンパニー」にアルバイトとして勤務。その後、系列店のテディベア専門店「Cuddly Brown」で店長を務める。2001年3月、東京・松陰神社前で「カフェロッタ」をオープン。全国からお客様が足を運ぶそのカフェは2021年9月末で建物老朽化による建て壊しのため惜しまれつつ閉店。いまは文筆業や買い付けを行う。著書に「カフェロッタのことと、わたしのこと」(旭屋出版)がある。