Column no. 13

暮らしに芸術を
メイ・モリス


ウィリアム・モリスの末娘、メイ・モリス。
刺繍作家としても知られる彼女の確かな技術とスタイルから、いまの暮らしに繋がるヒントを考えてみます。

ウィリアム・モリスの末娘、メイ・モリス。
刺繍作家としても知られる彼女の確かな技術とスタイルから、いまの暮らしに繋がるヒントを考えてみます。

偉大なる父、ウィリアム・モリスの影響を受けて

ウィリアム・モリスの次女として生まれたメイ。多彩な父の元で育った彼女自身もまた、類まれなる才能に恵まれていました。幼い頃より母ジェーンや叔母エリザベス・バーデンより刺繍の手ほどきを受けたことから、刺繍作家としての天性が開花。その才能は、ロイヤル・カレッジ・オブ・アートの前身であるナショナル・アート・トレーニング・スクールで刺繍を学んだ後、1885年に23歳という若さでモリス商会の刺繍部門の責任者に就任したほど。イギリスの刺繍作家の中で最も影響力のあった人物と言われています。

父と同じくとても勉強熱心であったメイは、伝統的な針仕事の技術や色、デザインの研究に専念。その研究から刺繍だけでなく壁紙、ジュエリー、織物において新しいデザインをモリス商会のために制作しました。例えば彼女の初期作品として有名なのは、1883 年にデザインした「Honeysuckle」。現在でもMORRIS & Co.の人気のある壁紙のひとつです。

また父モリスの遺志やアーツ・アンド・クラフツ運動の考えを受け継ぎ、メイは教師や運動家としても活動しています。イギリスの芸術家協会Art Workerʼs Guildがこれまで女性の参加を認めていなかったことから1907年にWomenʼs Guild of Artsを設立するなど、女性の権利をうたうキャンペーンに尽力。「私たちが生きる芸術を最高レベルに保つこと」と、「展覧会を通しながら持続的な‟仲間意識の雰囲気”を作り出すこと」を目的に、女性のための労働組合の擁護者としても活躍しました。

Photo by undiscoveredscotland.co.uk

メルセッターハウス

芸術家として、また運動家として活躍する中、スコットランドのオークニー諸島にあるメルセッターハウスのため、メイは素晴らしい刺繍作品を残しています。メルセッターハウスは、アーツ&クラフツ運動の後援者でもあったトーマス・ミドルモアとその妻テオドシアが自分たちの住まいとするべく、1700年代に建てられた家を芸術と生活が結びついたものにリフォームした家でした。家具などはモリス商会から購入され、そしてテオドシアと親友であったメイは刺繍タペストリーをこの家のために製作。
デザインはもちろんメイが手掛けましたが、製作はメイとテオドシアが協力して仕上げたと言われています。これは1900年のことでした。

Photo © National Museums Scotland

実際にメイ自身の手で刺繍を施した作品はとても貴重なもの。このタペストリーも、現在ではスコットランド国立博物館に保管されています。手織りのリネン地に手紡ぎのウール糸で刺繍を施した芸術作品を、当時はベッドの後ろにタペストリーとして飾っていたそうで、芸術と生活を統一化するというアーツ・アンド・クラフツ運動の精神をここからも感じることができます。

メイが手掛けたこのような美しい作品たちをMORRIS & Co.では今の雰囲気に合うように「MELSETTER」コレクションと名付け、再現しました。この中にはメルセッターハウスの刺繍タペストリーからインスピレーションを受けたその名も「Melsetter」というプリント生地壁紙もあり、美しき技巧と生命力あふれる色とデザインが、現代の空間を彩ってくれます。

暮らしへの芸術の取り入れ方

ここからは、「MELSETTER」コレクションのアイテムを取り入れたインテリアのシーンをご紹介。アートが暮らしに自然と溶け込んだこれらの空間は、いまの暮らしに取り入れられる、芸術と生活の融合の実例です。

Seasons by May Embroidery

インコやバラ、チューリップ、そして渦巻き状の茎などを細部まで美しい刺繍で表現した生地は、メイ・モリスの刺繍作品であるSpring and Summerからインスピレーションを受けデザインされたもの。ナチュラル・カントリーな雰囲気のリビングルームにこんなカーテンを掛けたら、一気に部屋の雰囲気が華やぎます。カーテンに使われている色からピックアップして並べたカラーリングのクッションもポイントです。

Lemon Tree Embroidery

メイの父、ウィリアム・モリスのデザインの中でもっとも愛されているデザインのひとつ、“Fruit”。そのデザインに描かれているレモンの樹からインスピレーションを受けた刺繍生地はキッチンにおすすめ。デザインパターンも大きくないので、キッチンの小窓にシェードとして取り入れることも可能です。細かな刺繍で表現したレモン柄が、フレッシュでリラックス感のあるキッチン空間を演出してくれます。

Brophy Embroidery

Wardle Embroidery

ベッドルームは贅沢に刺繍生地をヘッドボードとカーテンに。美しい花模様が眠りの質も高めてくれそうです。どちらもメイ・モリスのデザインではありませんが、アーツ・アンド・クラフツ運動が盛んであった時期に活動していたデザイナーの作品からインスピレーションを受けたもの。細かく施された刺繍が芸術性を感じるとともに、普段の生活にも馴染むことを再認識させてくれます。

Newill

アートなデザインの生地は、子供部屋にももちろん取り入れたいところ。プリント生地なら気負わず取り入れられそうです。フクロウと渦巻く草やベリーを描いた可愛らしい生地で天蓋を作りました。写真はベビーベッドのため天井からの一点吊りタイプですが、キッズベッドなら壁付けの天蓋がおすすめ。女の子なら誰でも憧れるプリンセス気分が味わえる天蓋ですが、その他にも埃除けになったり、プライベート空間を子供のころから認識させたりできる、というメリットもあります。

インテリアの中に何か芸術性を感じるもの、自然の美しさを感じるものを取り入れる。生活に根付いた芸術が、日々の暮らしをより一層上質にしてくれる。ウィリアム・モリスやメイ・モリスが説いたその考えを取り入れ、日々の暮らしを楽しく、より美しく豊かに過ごしていきたいですね。


(Text by MORRISWORLD.jp staff)

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