Column no. 12

ルーアン大聖堂と
モリス

近代デザインの創始者とうたわれるモリスですが、歴史的建造物にも関心を示しており
特に中世ゴシック建築においてはその素晴らしさに魅せられていたようです。
モリスのゴシック建築への興味へのきっかけとなったのは、フランス西部に建つ「ルーアン大聖堂」でした。
2019AW の新作としてMORRIS&Co.より発売された「ROUEN VELVETS」コレクション
まさにこの大聖堂よりインスピレーションを受けたものです。
近代デザインの創始者とうたわれるモリスですが、歴史的建造物にも関心を示しており特に中世ゴシック建築においてはその素晴らしさに魅せられていたようです。
モリスのゴシック建築への興味へのきっかけとなったのは、フランス西部に建つ「ルーアン大聖堂」でした。
2019AW の新作としてMORRIS&Co. より発売された「ROUEN VELVETS」コレクションはまさにこの大聖堂よりインスピレーションを受けたものです。

美しき建造物、ルーアン大聖堂

パリから西へ電車で約1 時間半。セーヌ川沿いに開けた北フランス有数の大都市Rouen(ルーアン)はローマ時代から水運を利用した交易で発展を続け、10世紀にはノルマンディー公国の首都として栄えました。ジャンヌ・ダルクが没した街としても知られるこの地にはゴシックの宗教建築が多数残されていますが、中でも1145年頃に建築工事が開始、1544年に完成したRouen Cathedral(ルーアン大聖堂)はゴシック建築の代表として名が知られており、またクロード・モネの連作でも知られる存在でもあります。

モリスがこのルーアン大聖堂を目にしたのは、1854年20歳の夏のこと。初めてヨーロッパ大陸を旅することになったモリスは、この旅でさまざまな建築や絵画に触れることとなります。その時の感動を、長く時間を経た後に『The Aim of Art(芸術の目的、1887年)』で次のように記しています。

「初めてルーアンの街を目にしたとき、その外観はまだ中世の一部だった。その美しさと歴史とロマンスの融合がどれほど私の心をとらえたか、とても言葉では言い表せない。これだけは言えるが、過去を振り返ってみてもそれはかつて感じた最も素晴らしい喜びだった。」

この大陸旅行後の翌年、モリスはエドワード・( コーリー)・バーン=ジョーンズらと再度フランスを訪れ、芸術家の道に進むことを決意。ルーアン大聖堂との出会いは、彼の創造力に大いに影響を与えたに違いありません。

またモリスは中世の建築物を単に素晴らしい建築とするだけではなく、その建築を生み出した職人たちの労働と創造の喜び、クラフトマンシップ性についても注目。『Gothic Architecture(ゴシック建築、1889年)』では、「建築の仕事は調和的で協同的な仕事であり、極上の美術品のすべてを包括する。それらの作品は人間の生命の価値を表現するものである。」と書き残しており、ゴシック建築がモリスの社会主義的な考えにも大きく関係していることが伺えます。

モリスの人生に大きな影響を与えたルーアン大聖堂。モリスの創造力のみならず、古代建築や中世時代の芸術への深い情熱は彼の生涯をとおして重要な役割を果たしたのでした。

色に魅せられて

ルーアン聖堂内には、さまざまな時代のステンドグラスが飾られています。13世紀から16世紀にかけて製作されたステンドグラスをとおして目に届く色とりどりの光の美しさ、またそのクラフトマンシップにモリスも目を奪われたのでしょう。

これらのステンドグラスの美しい色彩からインスピレーションを受けた、今回のROUEN VELVETS コレクション。MORRIS&Co.のチーフデザイナーであるレベッカ・クレイグは、今回のこのコレクションについてこう述べています。

「色使いには特に自信があります。モスグリーンやオレンジ、サフランのような目を引くモダンな色を使用することで、(これまでのMORRIS&Co.にない)新鮮さを出せたのではないでしょうか。一方でインディゴと茜色の色使いはよりトラディショナルな雰囲気で、従来のモリスファンにも喜んでいただだけるはずです。」

MORRIS ROUEN VELVETS コレクション

ここからは、コレクションに収録されている6つのデザインを紹介します。ぜひお気に入りを見つけてみてください。

Strawberry Thief Velvet

1883年発表のモリス商会の中でも最も象徴的なデザインのひとつ、Strawberry Thief(いちご泥棒)。モリスが彼の家庭菜園から果実を盗んだツグミからインスピレーションを受けてデザインしたという、オリジナルの魅力はそのままにベルベット生地に置き換えました。
お馴染みのインディゴと茜色に加え、今回桑の実色とグレーを配した色が登場。デザインの力強さと美しさが魅力の大人気柄です。

Snakeshead Velvet

1876年発表のモリスお気に入りのひとつとしても知られる「Snakeshead」。モリスが研究していたインドのテキスタイルの色や模様の影響を受けています。スネークヘッド(蛇の頭)と呼ばれる釣鐘型のフリティラリアの花がより大きく、かつフォーマルなモチーフを彩るデザインです。

Fruit Velvet

1864年壁紙として発表されたウィリアム・モリスによる初期のデザイン、「Fruit」。今回初めてベルベットで製作され、これまでにないラグジュアリーな生地に仕上がりました。ロンドンのサウスケンジントンにあるヴィクトリア&アルバート博物館所蔵のグリーン・ダイニング・ルームに果実と葉で構成されたよく似た壁紙が貼られています。

Indian Flock Velvet

フロックのようなテクスチャー感を持つ贅沢なベルベットに仕上げた「Indian」。オリジナルは2色刷りのブロックプリント壁紙で、ジョージ・ギルバート・スコットによりデザインされたものと考えられています。モリス商会に残るアーカイブの記録によると、数十年の間で他のどのデザインよりも配色の再考がされている柄です。

Sunflower Velvet

オリジナルは、1879年に発表されたウィリアム・モリスによるデザイン。様式化されたヒマワリを上質なベルベット地に表現しました。ドラマチックな色合いが揃いますが、特にサフランの雄しべの色のようなベルベットは新しいクラシック・モリスの世界観を演出してくれます。

Honeysuckle & Tulip Velvet

1876年に発表された、絡み合う葉や花のモチーフを左右対称に繰り返し配置したモリスの初期デザイン。
チューリップとセイヨウスイカズラが描かれています。


(Text by MORRISWORLD.jp staff)

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